魚を食べたら激しい腹痛が・・・ アニサキス
こんにちは、浦和消化器内視鏡クリニック院長の勝山です。
梅雨も終わり、魚が美味しい季節になってきましたね。本日はアニサキスについて書こうと思います。
目次 1.アニサキスとは?
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1.アニサキスとは?
アニサキスをご存知でしょうか?アニサキスはサバやイカ、アジ、カツオ、サンマ、サケなどにいることがある寄生虫です。白く細長い2~3㎝程のやや太い糸の様な虫で、肉眼でみることができます。
とは言っても、よく注意してみなければ見つけることが難しいので、このアニサキスに気づかずに生きたまま食べてしまうと、胃アニサキス症を発症し、激しい腹痛におそわれるがあります。
ちょっとショックだったのでよく覚えているのですが、魚介類からアニサキスを実際に探すという授業が大学時代にありました。講師の先生が買ってきてくださった魚やイカは、鮮度も良さそうで、アニサキスなんているのだろうかと思っていたのですが、各自でよく探してみると、教室の様々なところから次々に悲鳴が上がり、結構な数のアニサキスが見つかりました。アニサキスは珍しい物ではなく、寄生しているものだと思って対処することが必要なのだとあの時に強く感じました。
基本的にアニサキスは寄生した魚介類の内臓にいるのですが、時間が経つと内臓から筋肉に移行することが知られています。内臓を生で食べなくても、筋肉部に移行したアニサキスを刺身などで食べてしまうことで、胃アニサキス症などになることがあります。鮮度が良いうちに内臓を取り除くことで、ある程度の予防効果はあるようですが、サケ・マス類は肉質部にいることも多く、注意が必要です。
面白いことに、アニサキスにも種類があって、内臓から肉質部へ移行する傾向に違いがあることもわかっています。太平洋側のサバに寄生するアニサキス(Anisakis simplex sensu stricto)に比べて、日本海側のサバに寄生するアニサキス(Anisakis pegreffii)が肉質部に移行する確率は100分の1程度だそうです。日本海側のサバに寄生するアニサキスは内臓にとどまる傾向が強いので刺身で食べても、平気なことが多いのです。九州の北部などで、真サバに胡麻を和えたごまさば等、サバを生で食べる習慣があるのに対して、関東など東日本では火を通してサバを食べることが多いのは、アニサキスの種類が影響している面もあるのではないでしょうか。そういえば、九州で消化器内科をされている先生が、胃アニサキス症をあまり診ないとおっしゃっていました。
2.アニサキスに正露丸?
個人的に、最近のアニサキスの話題と言えば、正露丸です。アニサキスに正露丸が効くという情報を耳にしてから、本当に効果があるのなら、緊急で胃カメラ検査をする必要が無くなるのではないかと期待していました。
胃アニサキス症を一度経験したことのある方は、その症状とエピソードが特徴的であるせいか、2度目以降は、ご自身で「アニサキスだと思います」と来院される方が多いのですが、ご自身でアニサキスを疑って、正露丸を服用した後にご来院された方がいました。正露丸の効果は確かにあったようで、服用後に痛みが緩和されたそうです。激しい腹痛が大分良くなったものの軽度の痛みが持続するため来院されたとのことでした。胃カメラでアニサキスを摘除した後も軽い痛みが続くことはよくあります。このお話を聞いた時点では、アニサキスが死んでいなくなり腹痛が良くなったのか、あるいは、アニサキスがまだ生きているので痛みが持続しているのかがわからず、ご本人と相談の上、胃カメラの検査をすることにしました。実際に見てみると、アニサキスが胃壁に食いついていました。まだ生きた状態で胃壁にはいりこんでいたので、内視鏡的に除去しました。正露丸も効果があるようですが、胃カメラでの治療も必要なようです。
アニサキスは珍しいものではありません。くれぐれも注意して、夏・秋の味覚をお楽しみください。